『ポレポレ英文読解プロセス50』とよく比較されるが, そもそも用途が違う。
『ポレポレ』は「読解プロセス」の名の通り英文を読む際の頭の働かせ方一般を鍛えてくれる本だ。
難しい英文を使ってはいるが, 「主語はどれだ, 対応する動詞はどこだ」みたいな, どんな英文を読むにも必要な読み方の「基本」が書かれている。
著者も前書きで「読解の基本プロセス」を身に付けるための本だと書いているが、もちろんここでいう「基本」とは「土台」であるという意味であって「簡単」だという意味ではない。
一方『英文読解の透視図』の方は, とりにくい構文のパターン集だ。
読み方のプロセスを一から教えるような本ではなく、河合塾の3人の先生方が日々受験生に接するなかで収集した, 受験生が躓きやすいポイントが整理された標本集だ。
当時新刊の『透視図』を立ち読みしたときのことを覚えている(本棚の位置まで覚えている)。
『英文解釈教室』を愛読していた私にとって, 非網羅的な『透視図』は「あれも載っていない, これも載っていない」という穴だらけの本に見えた。
しかし講師になってから改めて読んでみると, 受験生にとって有用な本であると思うようになった。
構文パターンの網羅を目指した『英文解釈教室』に対して, 『透視図』は躓きポイント集であり, 時間対効果が非常に高い。
『ポレポレ』と『透視図』, どっちが難しいかという点についてだが, 正直大差ない。
『ポレポレ』が読みの根本を教える本で, 『透視図』が受験生が苦手なパターンを潰してくれる本だという点からいえば先にやるべきは『ポレポレ』だが,
解説の読みやすさなどから『透視図』の方が読みやすいと感じるひとが多いだろう。
最後に『透視図』は巷で言われているほど難しすぎる本ではない。
『透視図』の第1講 Challenge 問題4(p.27)の新潟大の文章は,
『ビジュアル英文解釈』PARTⅡ の後ろから4つ目の問題にも収録されている(全61講あるなかの第58講)。
『ビジュアル』レベルをこなしていれば『透視図』にも取り組めることを示している(語注はむしろ『透視図』の方が多いくらいなので安心して取り組める)。
東大京大を除く旧帝大は『ビジュアル英文解釈』レベルでもなんとかいけるだろうが, 旧帝大志望者はできれば下線部対策にも『透視図』をやっておきたい(あくまで他の科目との相談になるが)。
もちろん早慶志望者にも英文読解の仕上げにお勧めだ。
これをやれば読めない英文はなくなる、なんてことはまったくないが、受験生としてはここまでやれば一安心というレベルには達することができるから。
私は, 多くの受験生が難しいことをやり過ぎていると思っているが, 『透視図』は過度な投資とは思わない。
短時間で多くのことが得られる。旧帝大や難関私大受験生にはぜひ勧めたい。
使用時期
◎ 東大京大を目指している高校1年生は高校2年の終わりまでにはこの本を終わらせたい。
◎ 1年間猛勉強してなんとか難関私大を目指すという受験生, 英語以外は得意だけど英語が……という東大受験生, ある程度余裕がある旧帝大受験生
は受験の秋・冬に滑り込むのもあり。
ちなみに教え子たちは『透視図』を一周するのに25時間ほどかかっていることを付言しておく。