3.例文の質最高!
評論文頻出テーマを(可能な限り)問題文に使った漢字本がある。
『漢字マスター1800+』はその嚆矢となった本だが、『TOP2000』はさらにその上を行っている。
この記事を書くきっかけになった京大の文章は「疎外」が裏のキーワードだったので「疎外」を例にすると、
現代文で「疎外」は2つの意味で出てくる。
(1)ひとつは日常よく使う意味での「疎外」
(「仲間はずれにすること、よそよそしくすること」(例) 転校初日で疎外感を感じた)(2)もう一つは哲学用語の「疎外」
(マルクス哲学で「人間性喪失」の意味。よく「労働」との絡みで出てくる)
ほとんどの漢字本では「仲間からソガイされる」のような問題文が載っている。
しかし『TOP2000』では「機械文明が人間をソガイする働きを持つ」という頻出テーマに則った例文で載っている(先行する良書、河合塾の『漢字マスター1800+』にもほぼ同じ例文)。
意味も「人間性を失うこと・仲間はずれにすること」と類書よりも分かりやすく定義されている。
先ほど僕は「疎外」は2つの意味で出てくると書いたが、実は『TOP2000』では「疎外」は2回出てきて、もう一つの方は
「よそ者をソガイする」(意味:仲間はずれにすること)となっている。
つまり「疎外」の重要な意味が2つとも出てくるのだ(『漢字マスター1800+』の例文を初めて見たとき、現代文の頻出テーマになっていることに唸るとともに、「でも『仲間はずれにすること』の方でもよく出てくるんだけどな…」と思ったものだ)。
ちなみに同年(2016年)では、早稲田(国際教養)、東北大で、前の年では早稲田(教育)、青学(文)で哲学用語の「疎外」がキーワードになっている(すべて「マルクス」という語もセットで出ている)。
2014年の慶應(文)の小論文ではカミュの『異邦人』によせて「よそよそしくする」の方の「疎外」がメインテーマ…
…と書いていて突然思い出した。
大学時代、クラスメイトに「ムルソー(『異邦人』の主人公のろくでなし)に似てない?」と言われて少し悩んだことがあったっけ…