『ポレポレ英文読解プロセス50』は、心(しん)に粘土を肉付けしていく塑像ではなく削って造る彫像のようだ。
読解の本はたいていSVの発見から始まる(そこは『ポレポレ』も同様)。
SVの発見を説明する際、普通は
・Sの直後にVが続く分かりやすいケース
・Sの前に前置詞句が付いているケース
・SとVの間にSに対する形容詞句が続く各ケース
(中略)
・倒置
などと網羅的に、かつ順を追ってボトムアップ式に読者を導こうとする。それはそれで正攻法だと思う。
しかし『ポレポレ』はトップダウン式にいきなりゴールから始まるし、項目の網羅にも関心がない(例えばSとVの間に入るものを網羅しようとしてない)。
それでいて文法知識が曲がりなりにも分かっている学生にはその高度な運用法(読解プロセス)がきちんと学べるようになっている。著者の西きょうじ先生はここら辺の削り方が惚れ惚れするほど巧みだ(あるいは読者を信用する書き方をされる)。この春、分析のために改めて『ポレポレ』を最初から最後まで3回読み、その彫像の妙に改めて感服した。こういう本は魂を込めずには書けない。
1から一つひとつ教えてくれる本ではないので、「分詞は形容詞の役割を果たせる」、「関係副詞の節は先行詞を修飾する形容詞節である」などの説明が必要な人は、先に文法本をきっちり終わらせること。