受験生の頃から大好きな参考書である。
スラッシュリーディングとは?
『長文実況中継』はいわゆるスラッシュリーディングの本だ。
が,ただのスラッシュリーディングの本ではない。
本書の魅力を語る前に「スラッシュリーディング」について一応説明しておこう。
Roger knew that he had to leave the old barn before dawn if he were to escape his pursuers.
*barn 「納屋」 dawn 「夜明け」 pursuer 「追跡者」
この文を「訳す」なら
「ロジャーは, 追っ手から逃げおおせるためには, 夜明け前にその納屋を出なければならないと分かっていた」となる。
ざっと一読してから眼を左右に動かしてどこから「訳す」か探す。
そのときの訳している順番は下記のようになる。
これは, 返り点が付いた漢文を訓読するときのように行ったり来たりして訳すので「返り読み」と呼ばれたりする。
「こっちを訳してからここを訳してつぎはこっちを…」と視線が行ったり来たりするので読むスピードが落ちる。
そもそもリスニングでは聞こえた先から音が消えていくので返り読みできない。
返り読みはいずれ卒業しなければいけない読み方なのだ。
この「返り読み」に対して, 英文を英語の語順のまま, 前から順に読んで理解していくことを「直読直解」という。通訳者のトレーニング方法でサイトトランスレーション(サイトラ)とも呼ばれる。
Roger knew (ロジャーには分かっていた)/ that he had to leave the old barn(その古い納屋を出なければならないということが)/ before dawn (夜明け前に)/ if he were to escape his pursuers(追っ手から逃げおおせるためには).
そして直読しやすいように, 英文を意味のカタマリごとにスラッシュ”/”で区切る方法をスラッシュリーディングという。
返り読みするよりも英文を速く読めるようになる他, リスニングで効果を発揮する。
※ちなみに伊藤和夫師の『英文解釈教室』も――はしがきで触れられているように――直読直解を目指した本である。